富士見F新刊とか

 今月の富士見は新人ラッシュ。4年ぶりの大賞受賞作はとりあえずあとまわしで、なんとなく努力賞から手にとってみたりするのはマイナー志向の性さっ。

輝石の花 (富士見ファンタジア文庫)

輝石の花 (富士見ファンタジア文庫)

 んー、なんか一言で言ってしまえば、「努力賞だね」という作品。
 雰囲気や世界観はなかな好み。でも、物語の面白さが今ひとつ。
 せっかくの輝石使いや《黙》という設定が物語構成の道具というよりは、小手先の道具になっちゃっているような気がする。
 これだけの設定があったなら、もっと物語を捻ってみても良かったような。
 文章は読みにくいということはないけど、描写がいまひとつというところ。
 全体的に練りこみが不足気味という感じ。
 もっとも自分の「面白い」の基準の一つは、なにかしら飛びぬけている点があることなので、この作品についてはかなり辛めのコメントになってるかも。
 でもまぁ主人公カップルの掛け合いやお供の精霊などのキャラ立ちはなかなかいい感じなので、次作に期待できそうな新人さんである。
 次作が出たらとりあえず買おう。

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

 去年の新人さんである瀬尾つかささんの新作。
 刊行を知ったときは琥珀の心臓 (富士見ファンタジア文庫)を続けないんだと大安堵。
 いや、あの作品はあそこで終わっているから良いものなのです!!
 続刊などしたら興ざめのいいところなのです!!
 でも短編はいい感じだったけどな!!*1
 富士見F文庫の近年の悪癖?に、良い感じに終わっている作品を続刊するというのがある*2ので、けっこう心配だったのですよ。
 他にも半年ほど経過しても次作のアナウンスはなかったので、もしかしてこのままフェードアウト!?とか。
 近年は心当たりがありまくるレーベルですからのう……。

 さて新シリーズ。
 おお、なんか宇宙モノらしいですよ、奥さん!!
 しかも燦然と輝く〝01〟の文字!!
 なんか不吉*3が二連装でわーいという感じですねっ!!
 
 物語設定は導入部から飛ばし気味かも。
 圧倒的戦力をもつ異星人の前に人類は戦わずして降伏し、彼らは支配する代わりにその圧倒的な技術力で作られた〝ゲーム〟を渡す。
 その〝ゲーム〟で優勝したプレイヤーは彼らの元に行く権利を有し、その見返りとして彼らの技術などを渡してくれる世界。

 シックス・ボルト (電撃文庫)とほぼ同じ設定だけれども、こちらは陰鬱さなどはそれほど描写されていない。なにかがおかしいのだが、それは徐々に明らかにされていく。この辺りの構成の巧みさは前作も同じだったが、より磨きがかかってきている。
 またキャラ達もよく立っている。
 主人公の雫は、一種のブラコンで、兄の背中をおいかけて優勝をめざしている勝気な子だが、実は弱気にもなるし、オールラウンドプレイヤーである自分にコンプレックスがあったりする。
 伝説にまでなった天才メカニックである聖一は、大事なものを全て奪われ、しかも自分はそれに加担していた。そして常に置いていかれる側でしかないことに強いコンプレックスがある。
 全てを振り切って前に進む者と常に置いていかれる者の物語が主軸としてあるようである。
 ここまで書いて気が付いたが、前作とキャラの立ち位置がほぼ同じですな。
 この系統の物語が好きなのかなぁ、作者さん。
 とにかく次が読みたい作品である。

*1:ファンタジアバトルロイヤル2005年秋号に掲載された〝琥珀の心臓〟外伝のこと

*2:あくまで主観

*3:宇宙モノはあまり売れない・題名に数字が入っていても続刊しなかったという実例が富士見Fにはある