今月の電撃文庫

今月は、もとい今月も豊漁。受賞は逃した最終選考作を出版するというのが、電撃文庫の驚異的な層の厚さと余裕を示していますよね。

ウィザーズ・ブレイン〈8〉落日の都〈上〉 (電撃文庫)

ウィザーズ・ブレイン〈8〉落日の都〈上〉 (電撃文庫)

さて、続きは一年後か。<いろいろ間違っ……ているよね?(汗
 約一年ぶりの新刊。ワクワクしながら一気呵成に読みおえた。
 実に面白かった。
 
 世界の秘密が示された前巻が「天地鳴動」とするならば、この巻では「静かなる胎動」。
 主要キャラたちのように世界の謎に挑む者たちではなく、日々を生きていかなければならない普通人たちの話が大きくクローズアップされている。
 戦闘シーンはほとんどなく、超人である魔法士と普通人の日常を書くことに紙幅を費やしている。
 これまでほとんど書かれてこなかった普通人が何を考え、なにをしようとするのか。
 それが政治的な動きと絡みあって物語を形作る。今までは無名の人たちは数で書かれてきていた。
 基本的に「特別なもの」をもつキャラクターが物語の中心となるライトノベルで、キャラクターではなく、その周囲から物語を始めるという、大転換が行われたわけだ。
 そして物語は、主要キャラクターたちの動きとはほとんど関係なく動いていき、大きなうねりとなる。
 佳境に入ったということを実感させてくれますね。
 そして、最高潮に達したところで巻が終わる。
 あああ、続きが早く出てくれることを切に願います。


藍坂素敵な症候群〈2〉 (電撃文庫)

藍坂素敵な症候群〈2〉 (電撃文庫)

 今回は「パンツ」ではなく「まわし」。相撲のまわしがポイント。
 ……新しい方向性を開拓していくな。
 序盤はおろか、ほぼ終盤までちょとえちぃコメディで埋め尽くしておいて、ずだんと落ち込ませるあたりはやはり素敵に水瀬センセである。
 ちゃんと諸所に不安になるような描写がはいってはいるけど。

 新キャラはいっろんな意味で「ギリギリ」な銀髪無表情娘だった。スカートをギリギリまで上げるですとっ!?
 

 

俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 (電撃文庫)

俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 (電撃文庫)

 最終選考作の一つとのこと。
 説明調の長い題名が最近増えてきたような気がする。
 
 内容はほとんど題名の通り。
 幼なじみの主人公とヒロインが素ではいちゃデレ状態(ヒロインのみ)で、魔王と勇者モードではわりと本気で挑みあう。
ちなみにヒロインが勇者だけど、魔王が主人公であることは知らないので手加減なんかしない。
身体スペック的にだいぶ差があるようだけど、それでも戦り合えるのは幼なじみゆえの先読みという理由付けがいい。
安易に魔王スーツの性能とか魔力でパワーアップみたいなとこでないのが。
 ちなみに魔王と勇者というのは人外と人間を代表する役職名であって、別に殺しあいをするわけではない。
戦いはするが、それも条件付。
 一年の間に魔王は正体を暴かれたら負け、勇者は魔王の正体を暴いたら勝ちとちょっと魔王側に不利な条件なのだが、身体スペック的が基本的に人外側は人間よりも上なのでちょうどよいハンデとなっているというのもよく考えられている。

と世界観や設定もよくできているけども、ヒロインがなかなか積極的で、いちゃいちゃどころか襲うくらいにラヴ。
朝のお目覚めキスのためにマウントポジションとっちゃったり、主人公が望むなら露出だってすると宣言してしまうくらい。かなり積極的である。でもパンツは見せない。
 でもこれが魔王になっている主人公に対しては冷徹になるわけで、その落差が凄く楽しい
 次の話が非常に楽しみな作品ですね。