本の姫

“本の姫”は謳う〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)

　やー、面白かった。圧倒的なまでの世界観の作りこみが実に素晴らしい。
　とくに技術的な発想が面白い。
　文字がない世界で本が登場するという時点で「？」が点灯するが、その代わりとしてスタンプ技術というある意味で擬似３Ｄ表示技術が存在する。これ自体はあまり意味のあることではなく、バックグラウンドとなる設定としてあるわけで。しかもこれ自体は物語にはさして重要ではないが、これによって情報伝達について、いろいろな表現が出来るようになっている上に、文字というものの神秘性を高める仕掛けになっている。
　前作では物語のためにキャラがいたようなつくりだけど、今回についてはそれだけではなく、キャラ自体も個性的に分けられていて、物語がなくても存在できそうな強さがある。
　まだ一巻ということもあって数多くの伏線が貼られているだけで謎は深まるばかりだけれども、次巻から少しずつ見えてくるであろう物語全容が非常に楽しみ。