ガジェット・ポップ~蒸気帝国騒動記~ (GA文庫)

ガジェット・ポップ~蒸気帝国騒動記~ (GA文庫)

Alice (電撃文庫)≒クマや隊長は倒れてる―進め!双角小隊(ロング・ホーンズ) (富士見ファンタジア文庫)などの作者である川崎康宏氏の新作。いちおうシリーズものらしい。が、続きが出るかは正直キツイのではないかと思われる。
 ちなみに内容のせいではない。
 イラストも、(ちょっと好みではないが)メカもキャラも描き分けられる画力のある方である。
 しかし、川崎康宏氏の正直言って地味な文体にこのタイプのイラストをつけてしまうと作品自体が地味な感じになって、ライトノベルにあるべき華やかさが著しく減退している。
 これでは売り上げが伸びるのかと非常に心配になってしまう。(杞憂であってほしい)
 内容は地味目ではあるが、わたしは大好きである。氏の作品はどれもお約束だらけの展開が多いが、どれほど先の展開が読めようとも、最後まできっちりと読みたくなる。
ドリフのコントのごとき職人芸の魅力がある。
シニカルでテンポのよいキャラの掛け合い、お約束だらけで次にどうなるのか予測がつくのだけれども、おきたらやはり面白く読んでしまうような物語展開、その時がくるまで気づかないようにさりげなく張られる伏線。
ほんと面白いのですけれどもね。でも、この魅力が主ターゲット層であるティーンズに届くのかが非常に微妙。
 せめて後述のシャムロック「灼熱のメイドポリス ですぅ~」 (GA文庫)のような流行系(ただし男とメカが描ける人)か山田章博氏のようなリアル系イラストがついたら売り上げがかなり違うと思うのだけれども…。


 どこのエロゲーですか?
設定的には流行系エロゲーと同じ論理で作られたもの。内容も概ねそのまま。
絵師もその系統の原画家さんらしい。ただ女の子は可愛いけど、男(おやぢ)やメカが正直描けていない。
 ちょっと新鮮なのは男主人公がヲタク系ではなく、はた迷惑であるが、いちおう筋が一本通ったタイプなこと。そして自爆のロマンを解さないマッドサイエンティストという非常に稀な人種というのはちょと面白かった。
 今回はとりあえずキャラ紹介を兼ねたオープニングで、本筋は次巻からのようである。
 とりあえずイラスト買いでも十分元手はとれるし、内容もこの手のお馬鹿作品としてはかなり良いほう。
ただちょっとシナリオ的な文章・構成なので、内容にメリハリに欠けているような気がするが、これもシリーズ化が前提なせいだろうか?