電撃文庫「インサイドワールド」

本の紹介文試行錯誤中
 書評や感想文というような内容にはしないつもり。そういうのは遥かに上手い人がたくさんいるので、あくまで本の紹介という風味(ただしネタバレなし)で。
 新人さん・マイナーっぽい本優先で書籍ジャンルは限定しないけれど、基本はライトノベル・マンガが中心になるのは読書傾向からして必然。

インサイド・ワールド (電撃文庫)

インサイド・ワールド (電撃文庫)

「……当然です。私はいかなるときでも本気です」(本文27頁7行目より抜粋)


 短編3編にプロローグとエピローグを付け足した形式なのは電撃hp短編小説賞出身のためらしい。なお第五回<大賞>受賞作でこれがデビュー作。
電撃文庫2005年10月発売のなかで古橋先生の「ある日、爆弾がおちてきて」を除けばイチオシ。(「爆弾〜」は内容も知っているし、古橋先生の久しぶりの新刊なので別格だし、定評のあるシリーズものは除外。)
 宇宙とロケットが題材の中に盛り込まれているが、物語の核はあくまで登場人物たち。各章ではそれぞれ別の男女が主人公となって話が進む。かといってまったく関連がないというわけでもなく、登場人物が兄弟や姉妹であったり、クラスメイトであったりする。
 特殊な能力や超人が出てくるわけでもなく、世界の危機を救うわけでもない地味な物語が進行していくのだけれど(背景では実は世界が滅亡の危機に瀕しているのだが)、登場人物たちの濃やかな描写でそれを感じさせない。
 ぜひ次回作が読みたい新人作家さんである。
第三話ラストで各話の主人公たちが一堂に会するのだが、第一話の主人公である"僕"と春名希優のその後(といってもおそらく一ヵ月後くらい)が書かれており、春名希優のキャラクターのギャップが楽しい。言動はそれほど変わっていないのだけれどw