今年のお気に入り

 総括というほど深く考察したりはしない。
 単にお気に入りを今年の一月から順番にコメントでもつけていこうかと。
定番品やネットで高評価なものは省きがちの方向性で。

2006年1月

抗いし者たちの系譜 逆襲の魔王 (富士見ファンタジア文庫)

抗いし者たちの系譜 逆襲の魔王 (富士見ファンタジア文庫)

抗いし者たちの系譜 虚構の勇者 (富士見ファンタジア文庫)覇者の魔剣―抗いし者たちの系譜 (富士見ファンタジア文庫)

 去年の新人さんの中では断トツの一作。ストーリー構成、文章力ともにかなりいい感じ。なんでこれが審査員特別賞かなぁ?
 コンスタントに続きを出しているし、内容も期待を裏切らない出来。
 間違いなく去年の新人さんたちの中ではトップクラスの一人。

戦う司書と雷の愚者 BOOK2 (集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と雷の愚者 BOOK2 (集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と恋する爆弾 (スーパーダッシュ文庫)戦う司書と雷の愚者 BOOK2 (集英社スーパーダッシュ文庫)戦う司書と黒蟻の迷宮 (スーパーダッシュ文庫)戦う司書と追想の魔女 (スーパーダッシュ文庫)

 上記の三浦良氏とならぶ去年の新人さん達の期待の一人。
 一作目はいろいろと今ひとつな点があったが、新作ごとに良くなっていく。
 一作目の時には魔法の設定が今ひとつな点があったのだが、このシリーズを読み進めて行くうちにふと思った。

 自分は根が理系なせいか、緻密な設定を好む傾向があって魔法なども整理・体系化された設定を高く評価していたのだが、それはつまり「科学」と同義ではないだろうか? 魔法は科学と対立する概念と規定するならば、そうなってはよろしくなく、つまり整理されず混沌とした何かであるべきではないのだろうかとまぁどうでもいいといえばどうでもいいことをつらつらと考えさせられた作品だったりする。


2006年2月

ガジェット・ポップ~蒸気帝国騒動記~ (GA文庫)

ガジェット・ポップ~蒸気帝国騒動記~ (GA文庫)

 えーなんといいますか………とりあえず続きが読みたいなぁと。
とくにガジェット・ポップ
 いいじゃんかよう。挿絵が全然かわいくなくてもまともな人物がいなくてもおっさん主役でスラプスティックコメディでも。


護樹騎士団物語II アーマンディー・サッシェの熱風(かぜ) (トクマ・ノベルズ)護樹騎士団物語 螺旋の騎士よ起て! (トクマ・ノベルズ EDGE)護樹騎士団物語〈3〉騎士団への道 (トクマ・ノベルズEdge)護樹騎士団物語〈4〉熱闘!入団競技会 (トクマ・ノベルズ)護樹騎士団物語〈5〉界梯樹のひみつ (トクマ・ノベルズedge)

 敵役は狂ってるほどにいやなヤツらばかりだし、味方は良い人たちばかりという、とてもステレオタイプなキャラが多いけど、それだけに窮鼠となる主人公の波乱万丈の展開がとても興奮するのです。

ユメ視る猫とカノジョの行方 (電撃文庫)

ユメ視る猫とカノジョの行方 (電撃文庫)

 不思議な雰囲気がなんかよい感じなのですよ。


2006年3月

鋼鉄の白兎騎士団 I (ファミ通文庫)

鋼鉄の白兎騎士団 I (ファミ通文庫)

鋼鉄の白兎騎士団 II (ファミ通文庫)鋼鉄の白兎騎士団 III (ファミ通文庫)

舞阪洸先生だから文章もよいしストーリーもいいし挿絵も伊藤ベン師で文句をつけようがない良作。
 ただひとつだけ欠点があって、全体的に挿絵がエロエロすぎて人に奨めにくいのさーw
 非常に骨太な剣のファンタジー物語なのにだが。


2006年4月

とるこ日記 〜“ダメ人間

とるこ日記 〜“ダメ人間"作家トリオの脱力旅行記〜

 え?ライトノベル違うって? そうじゃない、著者達の存在自体がライトノベルなのだっ(爆

天使のレシピ (電撃文庫)

天使のレシピ (電撃文庫)

天使のレシピ〈2〉 (電撃文庫)

天使のレシピ〈2〉 (電撃文庫)

 期待の新人さん三人目。
 天使いらないとか文章がいまひとつなところがありましたが、二巻からは文章もかなり良くなりましたし、なんといっても作中の空気がよいのです。
 
 このように急に化ける方がいるから新人さんは面白いですね。

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

 過去の文学作品を物語の展開に取り込むという斬新さがありながら、でも普通にライトノベルになっているというのが面白い。やや一般文芸寄りではあるけども。
 そのうちどこかの出版社が出版しそうですね。
 物語の展開はともかく、作者さんの文章の雰囲気は文芸小説に近いし、そのうち一般文芸にも進出するんじゃないかなぁ?(いわゆる境界型作家になるかも?)

カーリー ~二十一発の祝砲とプリンセスの休日~ (ファミ通文庫)

 今をときめく高殿円氏の作品。内容は、爆発的に面白いほうではなくしみじみと面白いタイプ。自分はどちらかといえば絵買いだったかも。


2006年5月

宇宙海兵隊ギガース〈4〉 (講談社ノベルス)

宇宙海兵隊ギガース〈4〉 (講談社ノベルス)

宇宙海兵隊ギガース (講談社ノベルス)宇宙海兵隊ギガース〈2〉 (講談社ノベルス)宇宙海兵隊ギガース〈3〉 (講談社ノベルス)

 緻密な計算をベースにおこなわれる宇宙戦闘の描写が美しい作品。物語の底流にはガンダムナデシコがあると思うのだけれども真実はしらない。


2006年6月

ウィッチマズルカ (1).魔法、使えますか? (角川スニーカー文庫)

ウィッチマズルカ (1).魔法、使えますか? (角川スニーカー文庫)

ウィッチマズルカ (2). つながる思い (角川スニーカー文庫)

 妹すきすきーなダメ姉とお姉ちゃんだいすきーな妹のただれた姉妹の絆の物語。
 作品に流れる空気が良いのですよ。
 ……なんかこればっかりだな?

お・り・が・み 澱の神 (角川スニーカー文庫)

お・り・が・み 澱の神 (角川スニーカー文庫)

お・り・が・み 天の門 (角川スニーカー文庫)お・り・が・み 龍の火 (角川スニーカー文庫)お・り・が・み 外の姫 (角川スニーカー文庫)お・り・が・み 獄の弓 (角川スニーカー文庫)お・り・が・み 正の闇 (角川スニーカー文庫)お・り・が・み 光の徒 (角川スニーカー文庫)

 初心者ガイドまで作ってしまったシリーズの最終巻。
 ストーリーいきあたりばったり・設定いいかげんでありながらも、ギャグとシリアスをナチュラル/シームレスでつなげる妙味なテンションの文章が非常に楽しい作品でした。


2006年7月

鋼殻のレギオス (富士見ファンタジア文庫)鋼殻のレギオス(2) サイレント・トーク (富士見ファンタジア文庫)センチメンタル・ヴォイス―鋼殻のレギオス〈3〉 (富士見ファンタジア文庫)コンフィデンシャル・コール―鋼殻のレギオス〈4〉 (富士見ファンタジア文庫)

 フェリ先輩がどんどんかわいくなっていくのが良。


2006年8月

 黒歴史(になりつつある)

 わりといい感じの少女戦記もの。いわゆる萌え絵を押し出していつつも、メカや軍事描写にけっこう力が入っている感じ。

終わる世界、終わらない夏休み 芹沢和也の終末 (ファミ通文庫)終わる世界、終わらない夏休み ~桜井深優の終末~ (ファミ通文庫)

 時間ループもの。設定的にはそんなに珍しいものでもないけれども、実に良い感じの恋愛ものでありました。泣けるよ?


2006年9月

ヤクザガール・ミサイルハート (竹書房ゼータ文庫)

ヤクザガール・ミサイルハート (竹書房ゼータ文庫)

 えーとツンデレヒロインだっけ?<うろおぼえ

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

 去年の期待の新人さんの新作。
 宇宙モノ?でスポ根とみせかけて、実際には全てを振り切って進む者と残される者の物語。



2006年10月

 おりがみシリーズの続編。といっても世界設定を引き継ぎ、キャラが一部再登場しているだけで主人公などは違うというちょっと珍しい形での続編。
 はったりと運だけで勝ち続ける主人公に先はあるのかっ!!
 (いや、でも勝率を高めるようにはしているのだけれどもね?)

付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います (電撃文庫)

付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います (電撃文庫)

 世界に救うとか謎に挑むなどの壮大な物語ではなく、日常に小さな不思議を挿入して進む。
 ヒロインが無表情系なのだけれども無感情というわけではなく、むしろ端々でむき出す感情のゆれがとてもかわいかったりする。


2006年11月

 "空気"を書くのが巧い枯野瑛さんの新シリーズ。
 「世界の外側」を覗いた不老の魔法使い達の戦い。主人公達の日常を侵食する魔法使い達の生き様に怒り、そして哀しい。


マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

 今年読んだ中でもトップクラスに入る作品。
 個人的には完成度は前作以上だと思う。
 前作における最大の敵役であるボイルド。前作で違和感のあった彼の虚無感を3冊をかけて書かれたこの作品。
 どこまでも哀しく、どこまでも壮絶に生きたボイルドの生き様に震えた。

 ただひとつの設定を追加するだけで前作との物語整合性を取り*1、そしてボイルドというキャラクターに厚みを加えた作者の手腕も最高。

超鋼女セーラ (HJ文庫)

超鋼女セーラ (HJ文庫)

 バカップ


2006年12月

ウィザーズ・ブレイン〈6〉再会の天地〈上〉 (電撃文庫)

ウィザーズ・ブレイン〈6〉再会の天地〈上〉 (電撃文庫)

 いちねんにいちどのおたのしみ。 ……思えば遠くにきたものである。
 上下巻だけどさ。
 下巻はまだ発売予定ないけどさ
 このライトノベルはすごい!!2006年版にはちょうど時期が外れて投票できなかったけどさ。
 まぁ、アレです。二年ぐらいは待てるからいいや。


 プロジェクトえーっくす!!
 物語展開はオーソドックスなのだけれども、ぐいぐい引き込まれる文章力の見事さはあいかわらず。そして作者のライトノベルな生活もあいかわらず。





では良いお年をー。

*1:細かい違いや変更はある