戦う司書と恋する爆弾

戦う司書と恋する爆弾 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と恋する爆弾 (スーパーダッシュ文庫)

集英社スーパーダッシュ文庫05年年9月発売の作品。第4回スーパーダッシュ小説新人賞大賞受賞作で、作者はこれがデビュー作とのこと。

 死者の記憶が"本"という形で遺され、神が建造したといわれる"図書館"によって管理される世界。神に変わって本を管理する武装司書たちの中で、女性ながら世界最強の武装司書であるハミュッツ=メセタ図書館長代行。記憶を奪われ、彼女を殺せという指令と爆弾を植えつけられた少年コリオ=トニス。
 彼はふとしたきっかけで読んだ本に記憶されていた美しい少女に魅かれていく…。
「わたしの言葉が届く時。
 大切な人が、大切な人を、失った場所に行って下さい。長い間、求めていたものがあなたの背中を押すでしょう。
 ほんの片時、風が止む一瞬。
 迷わずに走ってください。」
(本文55頁14行目より抜粋)

本の少女の言葉と少年少女たちの恋を絡めながら、武装司書と謎の組織との抗争は世界の破滅に向けて静かに進行していく。

 特異な世界観を持ちながらキャラの行動にあわせて設定を小出しにしていくという手法ですんなりと作品に没入できた。説明文好きな世界設定モノが多い中で珍しい部類に入るのではないだろうか。(自分は論文なども読みなれているので説明文などは苦にならないが、嫌いな人は多いだろう)
 ストーリーもかなり意外な方向に転がっていく。あからさまな伏線がいくつもあるが、どのように使われるのか分からないままクライマックスに突入し最後でキレイに収束する。(お見事とつぶやいてしまったくらい。)
ガジェットも豊富で、追憶の戦器、武装司書、予知魔法委員会、タブレット(本)などいろいろと想像できる。この設定だけでもシリーズ化してくれたら買う価値はありそう(当然視野に入れていると思うが)。
 大賞受賞作ということで面白さはある程度保障されているようなものだが、個人的趣味にも合う作品だった。
 設定好きや前嶋重機先生のイラストが好きだという人などは買う価値がある。



 最後にネタバレしない程度に一言コメントを羅列してみる。これはちょっと書いてみたいからw

  • "世界最強"と鳴り物入りで登場したハミュッツ=メセタは中盤以降ヘタレに。いや、まぁ状況が彼女にとって最悪になり能力を全開にできないわけですが。
  • 謎のキーワード"三毛ボン" これも伏線だったとわ…
  • 設定好きから見ると、穴が色々とあります。が、自分はストーリー(話の流れ)を読ませるために設定があると思うので気にしません。けれどツッコむ人は多いだろうなぁ…
  • "本屋"が違法な世界はちょっと生きたくないなぁ…。本を読むのに命がけなのも。<図書館を守る魔物たちを突破しないと本が読めません。
  • 循環物語モノ的な要素もあります。カンのよい人は中盤で物語構造が分かるのではないでしょうか?